今シーズンのとみつ金時の定植作業も先週無事に終了しました。
今シーズンは、5月の半ば植え付けのちょうど折り返しの時期に「もしかして梅雨入りしたのか?」と疑うような、この時期には珍しい長雨が続き、10日間ほど完全に植え付けや圃場の準備(肥料振り、マルチかけなど)がストップしてしまい、どうなることやらと心配していましたが、その後の天気は何とか安定し、無事にこの地域の定植適期と言われる6月20日を前に、13haの植え付けを終えることができました。
この地域では田植えは大体4月下旬〜5月下旬の1ヶ月ほどで行われていますが、さつま芋の植え付けはその約2倍、6月下旬までの2ヶ月間かけて行います。
これはさつまいもが貯蔵の効く作物であるという事が大きく影響していて、2ヶ月間かけてできるだけたくさん作った作物を2ヶ月間かけ収穫し、その後熟成期間を経てさつま芋の需要が伸びる冬季から順次出荷作業をしていきます。
これだけたくさん、保存のきく単一の作物を生産する中で、さつま芋の栽培にかかわる作業は他の作物(米、じゃがいも、豆類など)に比べ手作業が多く残っています。
もちろん産地によっては機械化が進んでいる地域もありますが、当社ではあえて手作業で行っている作業があります。
その一つがこの植え付け作業。
バッテリー式の電動機械に座り、一本一本竹で作った深植えできる棒を使って手作業で植えつけます。
さつま芋の定植機もあるのですが、大きな産地で試作をして作られた機械がこの辺りの土質に合わず、思ったような深植えができなかったり、作業スピードが手植えと変わらないなどの理由から、当社では今のところ手植えを行っています。
なぜ深植えに拘るのかというと、土の中で成長するさつま芋の秀品率(適度な大きさ、形の良いもの)を作るためには、土づくりと水分管理以外に、この植え付け方が大きく影響すると言われているからです。
この地域は圃場によって土質や水はけが異なり、土質に合わせて植えつけるには人の手の感覚に勝るものは今のところありません。
そして何よりすべて機械化されてしまったら味気ない。
人に手で収穫までの作物に思いを巡らせながら一本一本思いを込めて植える。
1列100mに苗約250本、一本一本手で植えていき、土をかぶせていきます。
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とみつかぼちゃの植え付けが終わり、最初に植えた苗はすっかり根が付き、トンネル内(保温、風よけ用)ですくすくと育っています。
今年は畑の準備(耕運、肥料散布、畝たてなどのトラクター作業)がこれまでにないペースで順調に進み、ビニールハウスで育てていたさつまいも苗も順調に育ちました。
おかげでさつまいもは4月22日にスタートした植え付けから3週間、すでに折り返し近く植え付けを進めることができ、これまでにない順調さに驚いていたのものの、春先から季節が前倒しでやってきたツケか、昨日九州地方南部が平年より2週間以上早く梅雨入りしたとのことで、来週からこちら北陸地方もずっと雨マーク。
これまで嘘のように順調に進めてこれたトラクターや機械を使った作業(植え付け)は雨が続くと畑がぬかるんで機械が入れなくなるため、晴れの日が3日以上続かないと難しくなってきます。
そんな雨予報に驚愕しながらも、貴重な晴れ間はスタッフ総出で一気に作業を進めています。
今シーズンは新入社員やインドネシアからの新規の実習生がいないため、スタッフ全員が2年目以上の作業経験者となり、植え付けや苗切作業のスピードも上がり例年になく効率よく作業が進められます。
約2か月に渡るさつまいもの植え付け作業を順調に進めるには、圃場の準備、育苗、苗切、植え付けの作業それぞれを効率よく進めるチームワークが欠かせません。
それに加え、作付けが始まるとこの地域は獣害対策(イノシシ)が欠かせないので、電気柵の設置や、水はけのよい砂地の圃場は散布用の装置の設置、除草作業と約15haの圃場管理も同時に進めていきます。
収穫まで気の抜けない毎日ですが残り半分、天気とにらめっこしながらなんとか6月下旬までに無事植え付けが完了することを願って、作業を進めたいと思います!
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一つ目は、2月から始まったウイルスフリー苗の育苗。
バイオテクノロジーの技術を使って、高品質のさつまいもから成長点培養して作ったウイルスフリー苗。
ビニールハウスの中に苗床を作り、さらに土の中に電熱線を張り巡らせることで土を温めて、さつま芋苗の成長を促しています。
植え付けから約3週間、伸びた苗を切って新しい苗床に挿し芽をし増やしていきます。
さつまいもは強い野菜なので、苗を切って土に挿し、十分な温度と水分があればどんどん成長します。
これが雑草だったらさぞかし厄介だなと思うくらい、切られても切られても増えていきます(笑)
ただ効率よく苗を増やしていこうと思うと、適温を保つためのハウスの温度管理は中々気の抜けない作業になります。
氷点下になる夜もあれば、春の陽気で強い日差しが降り注ぐ日中は、トンネルの開け閉めで空とにらめっこしながら一日に
何度もハウスへ行ったり来たり。
特に挿し芽したばかりの苗は、まだ根が付いていないため、繊細な管理をして成長を促していきます。
そして先週、種芋の伏せこみも完了しました。
こちらは苗から育てるやり方ではなく、昨年秋に収穫したさつまいもを種にして、苗を育てて苗採りをする昔ながらのやり方。
こちらはウイルスフリー苗に比べると、品質にムラが出やすくなりますが、苗が管理の手間が少なくたくさん採れるのが特徴です。
当社では種芋のハウスには電熱線は入れず、トンネルをかけて加温するだけなので、成長まで時間はかかりますが、種芋自体から芽が伸びてくるため、バイオ苗に比べると管理はさほど難しくありません。
とは言え、どちらも適温を保つことが重要なので、毎日ハウスに行ったり来たり、子供以上に手のかかる作業ですが、我が子のよう
成長を見守り、順調に育つ様子を見守ることがこの時期の楽しみでもあります!
こんな風に、切った苗の脇芽が順調に伸びている様子を観察しながらムフフ・・・とにんまりしている今日この頃。
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先月末ですが、農林水産省、獣害対策優良活動の今年度の表彰になんと
「エコフィールドとみつ」が農村振興局長賞(団体の部)を受賞しました!
「エコフィールドとみつ」は結成ちょうど10年になる、とみつ金時の生産農家の中で
若手(当時20代〜40代)が集まり、高齢化が進む産地に新しい風を吹かせようと結成した
組合です。
結成当初から高齢化による離農や耕作放棄地が年々増えていく現状を受け、産地の衰退を食い止めるべく、
さらには小さな産地ならではの強みを逆手にとらえ、月に何度も話し合いを重ね、団結して
産地強化に取り組んできた仲間たちです。
ここ数年は地域外出身の新規でとみつ金時の栽培を始めたいという若手も受け入れ、
各農場の枠を超え栽培技術の継承をしながら、地域全体の保全にも力を入れていきました。
ここ3〜4年で一気に被害が増えてきた猪による獣害対策にも、組合でいち早く視察や勉強会を
行い、それぞれの農家が自分ごとと問題意識を持つことで、主体的に防止策を考え、地域と連携して
継続的な対策を続けてきたことが、今回の受賞に繋がったのではないかと思います。
私たちが獣害対策を学んできた中で、一番重要だと感じたのはやはり地域の連携です。
とは言え周辺地域での被害は年々深刻化する一方です。
これで安心という事はないので、常に獣たちとの知恵比べ、対策をしてもイタチごっこです。
これからも気は抜けませんが、今回の受賞に慢心せず、地域で協力していきたいと思います。
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とみつ金時を栽培しているここ富津地区は、日本海に面した丘陵地です。
海からの潮風にはミネラルが豊富に含まれており、この豊かな大地を長い年月をかけて育んできたと言われています。
戦後の開拓地で、国営の開拓事業で農地として整備されたおよそ90haの畑は、霊峰白山の伏流水、九頭竜川の水をパイプラインを通して貯水し、どの畑もバルブをひねれば農業用水として利用する事ができます。
この豊かな大地を維持し守っていくには、畑だけでなく、農道や畦の管理なども欠かせません。
農閑期の冬場、この整備作業も大事な仕事。
当社では雑木を切って薪にしています。
さつまいもは暖かい地域の作物なので寒さに弱いため、冬場常時出荷作業をしている出荷場の暖房はこの薪を使っています。
これぞエネルギーの地産地消
2月に入り先週は春のような暖かい日が続きましたが、そんな中、今シーズンもとみつ金時の育苗作業が始まりました。
今年は試験的に定植後の苗に乳酸菌を散布しました。
植物も人と同じように細菌や微量要素のバランスを保つことで健全な生育をすると言われています。
人間界で猛威を振るうコロナウイルスも終息を願うばかりですが、農業界、動植物の世界でも様々な病気が蔓延し、人々を脅かしています。
豚コレラや鳥インフルエンザ、そしてさつまいもにも「基腐病」と言う病気が各地で広がり始め、不安の中でのスタートですが、健全な苗を育て、植物のもつ本来の生命力を引き出し、菌に負けない物作りをしていきたいと思います。
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寒中お見舞い申し上げます。
2020はコロナに始まり、世界中が未だ出口の見えない混乱の渦中にいます。
こんな世界情勢の中、命をつなぐ「食」を生産する農家として、今年もできることを一つずつ取り組んでいきたいと思います。
都市部では緊急事態宣言が発令される中、幸い福井県内の新規感染者数は毎日一桁以内に収まっており、今年も年明けから出荷作業を再開しようと意気込んでいたのもつかの間、大雪の影響で数日間作業がストップしていました。
日本海に面したこの地域は比較的積雪量も少なく、三日間降り続いたものの積雪量は50cmほどでおさまりましたが、数キロ内陸部に入ると一気に増え、積雪量は1m近くあったそうです。
スタッフも雪に埋もれ自宅の敷地から出れなかったり、市場への出荷も交通マヒで難しいため、三連休も臨時休業をし、除雪作業に明け暮れました。
大雪が降った時、農家にとって一番怖いのはビニールハウスの倒壊です。
一日の積雪量が多かったり、何日も積雪が続くと、ハウスとハウスの間に滑り落ちた雪も次第にかさを増して、落ちる場所がなくなってハウスが潰れてしまいます。
三年前の福井豪雪の時も潰してしまった育苗ハウス、あの時の経験から油断は禁物ということで、事前にハウスの内部に支柱代わりに、コンテナなどでパイプを支える補助をします。
これは三年前の豪雪の時の写真ですが、支えをしてもこんな風にパイプが曲がってしまったり、
除雪する重機がスタックして、トラクターで引っ張るなど、一刻を争う自体にあの手この手で対応します。
三年前の豪雪の時には三十年振りの豪雪と言われていましたが、三年後にまたこんなに雪が降るとは。
夏場も全国各地でゲリラ豪雨による水害が起きているように、冬場のゲリラ豪雪が今後これまでの頻度では計れない確率で襲ってくることを覚悟しなければいけないと、今回の大雪で身にしみて実感しました。
また高速道路も主要な国道でも数十時間に及び立ち往生し物流もストップし、これまで通り、必要なものを必要な時に、お金を支払えば当たり前に手に入るという日常が途絶えるという現実を災害の度に実感します。
これから自分たちの生活を自分たちで守る、自立した生活と言うことが今後ますます見直されていくと思います。
ガソリンや、灯油、水や食料の確保など、災害に備えること、また昔ながらの保存食などがこれを機に見直されるといいなと思います。
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子供たちに主役になってもらい、晴れ渡る秋空の下、畑で野菜の収穫から、収穫した野菜を洗ったり、ひげ根取りなどの下処理をして、野菜を切って調理するところまでを一連の作業として体験してもらいました。
ニンジンや大根を初めて抜く子供たち。
自分たちが食べる野菜を、自分たちで収穫する。
土のついた野菜をたわしできれいに洗ってひげ根を取る。
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毎年この時期開催してきたOPEN FARMイベント
「空と大地のピクニック」
昨年で一度区切りをつけ、今後は参加者にもっと体験を取り入れていただくWSにしていこう計画していましたが、
今年はコロナの影響でたくさんに人が集う事や、密になること、特に大人数で飲食を共にすることを控えようと
例年のスタイルを変え、定員を減らし20名ほどの参加でこじんまりと開催した
「OPEN FARM DAY」
例年のビュッフェスタイルではなく、畑の恵みをギュッと詰め込んだランチBOXをご用意しました。
今年はいつもの自家製野菜を練りこんだ天然酵母パンに
北海道喜茂別町の「チーズ工房タカラ」のチーズや、あわら市の園芸カレッジで実習中の前ちゃんが育てたミディトマトをセミドライにして挟んだサンドイッチ。
同じく地元北潟で育てられた福井県の地鶏「福地鶏」を塩麹に付け込んで作った鶏ハムや福地鶏のゆで卵
とみつ金時のニース風サラダなどなど、食材にこだわり、素材そのものの美味しさが伝わるよう、混じり気のないシンプルな調味料を使用しました。
毎年楽しみにご家族で参加してくださる方や、初めてお母様とお姉さまと参加してくださったご家族など
ここ富津の広大な景色と、ここで育った野菜たっぷりのランチを満喫していただきました。
もちろん毎年恒例の芋ほり体験も!
風車の見える畑でお天気にも恵まれて、土に触れ、非日常の景色と体験をしていただけたのではないかと思います。
コロナの感染拡大を防ぐため、たくさんの方々が努力し自粛生活を送っていることで、私たちの地域では子供たちはこれまでのように学校へ通い部活動をすることができています。
それでもやはり、修学旅行やこれまで目標をもって頑張ってきた部活動の大会が縮小されるなど、子供たちをはじめ大人も自粛によるジレンマを抱えながらの生活を送られているのではないかと思います。
これまで大切にしてきた人と人との繋がりがコロナで希薄になってしまわないよう、また蜜とは無縁の広大な農村で、自然に触れのびのびとした時間を過ごし、子供たちが思い切り遊べる環境をと願いコロナ禍ではありますが思い切って開催した今回のイベント。
世の中が思いもよらないどんな状況になっても、人は毎日食べないと生きていけません。
こんな状況だからこそ食べることへの関心が高まるよう、農家として発信し、日々の農作業に精を出していきたいなと思います。
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お久しぶりです。
今年は新型コロナウイルスの影響で、テレワークや学校が長期休みになるなど、仕事と家庭生活がこれまで経験したことのない状況でやりくりしてこられた方も多いのではないかと思います。
コロナに感染された方や自粛の影響で様々な不安な日々を送られている方々に心からお見舞い申し上げます。
農業を営む私たちも、世の中の情勢に少なからず左右されながらも、幸い市場の需要はコロナの影響を受けることはなく、例年通り作付けをし、今シーズンも無事に収穫を終えようとしています。
今年は長梅雨で日照不足を懸念する中、それを解消するべく新しい栽培法なども試しながら栽培してきました。
今年の出来もまずまずで、味、大きさ、形、色合いなどすべての畑ではありませんが試行錯誤して取り組んできた栽培法の手ごたえを感じられる成果が出てきました。
収穫までその出来を確認することができないさつまいも栽培ですが、苗作り、土作り、定植法、定植後の水分管理など人お手を加えることでいい物作りができるところが、農業の魅力の一つだと思います。
まだまだこれからが楽しみです!
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そして今現在も治療中で辛い思いをされている方々に心からお見舞い申し上げます。
今回の事態でたくさんの業種が厳しい経営状況に置かれていることかと思いますが、ここあわら市も「芦原温泉」が街の代名詞ともいえる観光の町なので、旅館やそれに関係するたくさんの業種の方々が大変厳しい状況かと思います。
そして私たち農家が日ごろからお付き合いさせていただいている飲食業の方々も、今回のコロナの影響を大きく受けているかと思います。
未だ終息の見えない状況ではありますが、地域やこれまでの人と人との繋がりを大切にし、なんとか力を合わせてこの苦難を乗り越えていきたいと思います。
私たち食べ物を生産する農家でも、従業員の感染リスクを減らす努力を最大限し、皆様にこれまでと変わらず安心して食べていただける農産物を今シーズンも全力で栽培しています。
?フィールドワークスでは例年通り、とみつ金時の植え付け準備が進み、今秋から植え付け用の苗切が始まりました。
またとみつかぼちゃは今シーズンは生産量を増やして栽培しています。
どんな状況に置かれても人は日々食べることでエネルギーを蓄え、明日への活力につながっていくかと思います。
私たち日本の農家は今からまさに農繁期。厳しい状況ではありますが、自己管理をしっかりとして日々の作業に励んでいきたいと思います。
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〜ワークショップ開催のお知らせ〜
自家製かぼちゃペーストを使ったニョッキ作り!
ニョッキと聞くと難しそうなイメージですが自宅でも簡単に作れます。
親子で、お友達と、わいわい楽しくみんなで調理していただきましょう。
日程: 3月1日(日)11時〜13時
料金:大人2500円 子供6歳〜12歳1500円
6歳以下のお子様で大人とシェアする場合は無料
サラダ、スープ、パン付き
持ち物:エプロン、三角巾、ハンカチ、(持ち帰り容器必要な方のみ)
場所:(株)フィールドワークス多目的スペースにて
福井県あわら市北潟271-55
申し込み:mail :fieldworks.yoshimura@icloud.com
例年苗が来る頃は天気が荒れて積雪がある日が多いのですが、今年は最高気温10℃を超える春のような日。
明日は15℃を超える予想。
苗床の土の下には熱線を張り巡らせ、地温を上げて育苗します。
例年なら植え付けのこの時期は外気温が低いのでなかなか地温が上がりませんが、今年はすでに地温も20度を超えています。
例年にない気温と、日照の多さ、いつもより気の抜けない温度管理が必要そうです。
日中は気温が上がりますが、朝晩の冷え込みはまだ続きそうです。
夜の気温が5度を下回る日はハウスの中でストーブも炊きます。
育苗が始まると気の抜けない日々の始まりです。今シーズンも美味しいとみつ金時を育てるためにスタッフ一同精一杯努力していきたいと思います!
例年にない暖冬、これまでに経験したことのない異常な気候を目の当たりにする日々の中、常に自然と向き合う農業の現場で、このキーワードは目を背けるわけにはいかないキーワードだと思います。
先日福井駅裏のAOSSAで開催された農業者向けの講演会では、これからの農業を考える上で、とても重要なキーワードをたくさん聞く事ができました。
テーマは「2050年の農業 〜冷静と情熱の間〜」
まず、福井県出身の株式会社マイファームの社長、西辻氏のお話の中で特に感銘を受けたこと。
非農家出身の西辻氏が、子供時代、家庭菜園の手伝いをしていて大人から褒められた経験から農業に興味を持ち、「千豆」(ドラゴンボールに出てくる)を作りたい!と入学した京都大学の農学部で行われていた研究が「いかに効率よく生産性の高い農作物を作るか?」だというとこに落胆し、大学院には進まず、卒業後自ら事業を始めた経緯。
その理由は、戦後食糧難の中、経済成長を目標に、万人の腹を満たすための食料政策が行われた時代から72年、今は年間600万トンの食料を捨てている日本の社会で、食べ物というのはすでに飽和状態、供給過剰でとにかく腹を満たす時代ではなくなったということ。
この時代に戦後と同じ政策で、同じ流通の仕組みの中、農家がただ安定生産を追求した食べ物を作るだけでは、その仕組みの中でしか経営ができない。
既存の農家の多くは、JA出荷など、作ったものをどん!とJAに持っていき、キロいくらで取引され終わる。
今年のような暖冬には、作物がよく育ち、大豊作→供給過剰→相場(売値)が下がるという仕組みから抜け出せない。
JAの共同選果場で選別された作物は、その地域の特産品として扱われることはあるが、だれがどうやって作った物なのかまでは、スーパーで選ぶときにはわからない。
農家自身がどんなにこだわりを持って手間暇をかけて作っても、それを伝えなければその他の野菜と一緒になってしまう現状。
国内外から集められる大量の食料の中から、「これを食べたい」と思われるモノ作りを農家自ら行い、発信していくことが求められる中、何をどう発信していくのか?何をどう販売(give)し何を対価として得る(take)のか?
これは農家(生産者側)の問題。
何をどう食べるか?選べる時代であるにもかかわらず、安くてきれいな野菜が選ばれるし、野菜を買って調理する人すら少なくなって、どんな食材が使われているか見えない手軽な出来合いのお惣菜や外食、コンビニで食事を終わらせる人のほうが多いのかもしれない。
これは消費者の問題だとこれまで思っていましたが、食べ物が作られる工程、背景、思いに想像をめぐらすことがほぼないような、生産現場と食卓がかけ離れた現代社会の中で、大量の食べ物が捨てられていく背景には、それを変える努力をしてこなかった生産者にも原因があるのでは?という西辻さんのお言葉。
生産者としては胸に突き刺さる言葉でもありましたが、理想論ではなく、現実、農村からは見えない消費の現場で起きでいる事実は、気候変動やAIやIT化と激動する社会の中で、目を背けられない転換期であるということを冷静な語り口調の中からもひしひしと感じました。
これまで需要と供給のバランスで相場が決められてきた社会の中、その仕組みを覆すということは容易ではないけれど、だれもやらなかったことに挑戦する。それが変革だと。冷静な語り口からもとても熱い思いが感じられ、2050年、これからは次世代に受け渡していく私たち世代がこの変革期にどう動くのかが問われていると感じました。
そして今回が3度目となる「東北食べる通信」やポケットシェの創設者、高橋博之氏のお話は、やはり情熱的でした。
世界人口は2050年には100億人に達するといわれる中、日本は超少子高齢化。
農業者人口は全国民のわずか、わずか1.4%。しかもほとんどが60歳以上。
残り98.6%の国民のほとんどが、親戚にも知り合いにも農家がいない、故郷を持たない東京生まれ東京育ちと化してきたというお話。一極集中、地方の人口はどんどん都市部に流出し、地方はこのまま消滅していくのか?
こんなお話を高橋さんが東大の経済学部の学生さんに講義したところ、学生さんから
「地方は日本経済の足を引っ張ているのに地方は必要があるのか?都心に集約したほうが経済効率が良いのではないか?」と質問されたそうです。
「では都市では生産できない食料はどうするの?」と聞くと
「適地適作でそれぞれの国が効率よく作れるものを輸出入すればいいのでは?」と答えたそうです。
「じゃあ世界情勢が悪化して食べ物が輸入できなくなったらどうするの?」と聞くと
「そのために外交という手段があるんです」と。
日本の最高峰の教育を受けている学生さんがこう考えている。
そしてそういう意思の人たちが日本を動かしていく官僚へとなっていく。
国がどうにかしてくれるという考えでは地方は本当に消滅して日本はシンガポールのようになるのか?
「君、地方に行ったことある?」と聞くと
「一度だけ旅行で行ったことがある」と答えたそうで。
結局、この学生さんも全く地方に知り合いもいなく、そこで行われる営みは見えないし、そこに思いをはせることもなかった。
地方にはそれぞれその土地に気候風土の違いから育まれた文化や歴史があり、そんな営みが個性豊かな人やモノ作り育んできた、そういうモノやコト、ヒトは切り捨てられ、経済効率だけを追い求める社会ははたして幸福なのか?
高橋さんがポケットマルシェを始めた経緯には、東日本大震災で被災した東北に、東京からたくさんの若者がボランティアにきて、
何もかもう失った東北の人たちと関わることで、何も失っていない都会の人たちが逆に元気をもらって帰っていき、その後も都会の生活に疲弊すると東北を訪れ、農山漁村の復興に携わりながら元気になって帰っていく姿を目の当たりにしたからだそうです。
お互いに顔の見えない生産者と消費者が直接つながることで、今まで見えなかったものが見えてくる。
日々の農作業や漁の様子、厳しい環境の中一生懸命育ている様子、それを知ることで、食卓に上がった野菜を見ると大事に頂こうという気持ちになる。
生産者もまた、都心の家庭で自分が作った野菜を喜んで料理して食べている人たちの姿を目にすることで、やりがいや生きがいにつながり、もっと良い物を作ろうという威力がわいてくる。
そんなやり取りが広がれば、「地方はいらない」という発想は生まれてこないんじゃないか?人の心情とは、地方に台風が直撃したと聞けば自然と「あの人大丈夫かな?」と繋がりのある人に思いを馳せる。
19歳以下の自殺者数が年々増加している日本。
これだけモノがあふれる日本の中で生きる子供たちの多くが未来に希望が持てない。
人生100年時代と言われてるが、長く生きることよりもどう生きるかのほうが問われる。
大切なもは何なのか?幸福とは何か?
本当に心に深く刺さる高橋さんの情熱的なお話に胸が熱くなりました。
そして考えさせられます。
自分はどう生きるのか?
子供たちに大人がどんな姿を見せれるのか?何を残せるのか?
それぞれお二人の話の後に、会場の参加者からの質問を交えたトークセッションが行われ、その話の中に答えはこれだなと思えるキーワードがいくつかありました。
現在研修中の新規就農希望の若者から
「お二人のお話は常識を変えるような内容でしたが、常識を打ち破るときに重要なこと、大事にいしていることは何ですか?」という質問があり、西辻さんは
「今も自分が何か成し遂げたと思っていない。常に挑戦し続けている。挑戦しては失敗し、失敗することでどうすればいいのか?問題点が見え、また一歩前に進み、トライ&エラーを繰り返している。挑戦して、大いに失敗すればいい」と。
高橋さんは「社会を変えるには、それを批判したり攻撃するのではなく、これまでこの社会を築いてこられた方にまず感謝をし敬意を込めて話し合い、一緒に考えていくことが大切だと気が付いた」
そして
「何を言うかではなく、誰が言うかが重要だと」
この人が言うなら聞いてみようかな?という人間にならなければ誰も耳を傾けない。
本当にそうだな〜と納得。
AIが人に代わり作業をこなすような経済性だけを追い求める社会にヒトの幸福があるのか?
幸福とは何か?
それはやっぱり人と人との繋がりであり、個性や多様性を認め合う社会だと思います。
そして、これまでの常識では測れない、観測史上初が年々更新される異常な気候の中、これまでのように経済効率を優先したモノ作りで、世界人口100億人の胃袋を満たす食べ物が、AIや技術の普及で作られるようになるとは到底思えません。
エネルギーも食料も自給していく時代はすぐそこに来ているのではないかと思います。
そんな近い未来を見据えて、自分にできることを取り組んでいこうと改めて考えさせられた講演でした!
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照りつける日差しはまだまだ厳しいですが、秋めいた空気と風が気持ちの良い季節になって来ました。
今シーズンのとみつ金時の収穫も順調な滑り出しで進んでいます。
今年は台風が例年とは異なる動きで進み、千葉県や関東地方に多大な被害をもたらしました。
今直停電が続く地域もあるということで、被害に遭われた方々や先行きの見えない不便で不安な暮らしをされている方々に心よりお見舞いを申し上げます。
食べ物やエネルギーが当たり前にある暮らしのありがたさを痛感する日々ですね。
そんな当たり前の日常に感謝を込めて、今年も年に一度の収穫祭、自社農場を開放して
OPEN FARM DAY「空と大地のピクニック」を開催いたします。
今年のテーマは「Schweizer Tisch(スイスの食卓)」
私事ではありますが、独身時代、スイスの農家で一年間の農業研修をし、帰国してちょうど20年になります。
スイスでの生活で実感した、スローであるがままの暮らしが今の生き方の原点になっています。
そんなスイスでの体験談なども交えながら、スイスの食卓をフィールドワークス流にアレンジして御提供できればと思っています!
申し込み開始:9月22日 10:00amより
日時:10月20日(日)11:00〜14:00
会場:?フィールドワークス(あわら市北潟270−60−1)
定員:先着30名
参加費:芋掘り 一組1500円(とみつ金時3株分お持ち帰り付き)
ランチ 大人2000円 子ども1000円(3歳以上)
持ち物:軍手、長靴など汚れても良い服装 飲み物 レジャーシートなど
☆スケジュール☆
11:00 集合(キュアリング倉庫横の自宅前)
11:15 芋掘り体験
12:00 ピクニックランチ
14:00 解散
お問い合わせ・申し込み:?フィールドワークス
「空と大地」吉村みゆき
メール fieldworks.yoshimura@icloud.com
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最後の1枚の畑はスタッフ総出で、機械5台と手植えで定植し、今シーズンも無事に進められたことをみんなで祝してバンザイ!
とみつ金時の収穫までの一大大仕事が一段落しましたが、これから収穫までの2ヶ月間、草取りや水の管理と言った作業も大切な仕事になってきます。
これまで草刈機で刈っていた土手の草刈も今シーズンから、トラクターの後ろに装着できる大型の草刈機を導入しました。
斜面での草刈作業は重労働な上に危険も伴い、蜂にさされたりこれまでスタッフも暑い中大変な思いをして行ってきましたが、およそ15haある圃場全てのあぜや農道の管理は並大抵の物ではありません。
年々耕作面積が増え、管理していく土地が増えてきたので、思い切って導入しましたがこれはまさに100人力!
機械操作のテクニックは要りますが、重労働の体への負担をこうやって少しづつ軽減していければなと思います。
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